ジンの造り方とは|浸漬・蒸気抽出とワンショット製法

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最終更新 2026-09-29

目次
  1. 早見表
  2. 浸漬(マセレーション)という抽出法
  3. 蒸気抽出(ヴェイパーインフュージョン)という抽出法
  4. ワンショットとマルチショットという蒸溜方式の違い
  5. 法令上の分類との関係
  6. 買うときに見るところ
  7. 出典

ジンの造り方は、ベーススピリッツにボタニカルの香味をどう移すかという抽出法と、蒸溜をどう組み立てるかという蒸溜方式の組み合わせで決まります。抽出法には液体に漬け込む浸漬と、蒸気だけを通す蒸気抽出があり、蒸溜方式にはワンショットとマルチショットがあります。

早見表

区分手法内容採用を説明する例
抽出法浸漬(マセレーション)ボタニカルをベーススピリッツに直接漬け込んでから蒸溜するビーフィーター(9種のボタニカルを24時間浸漬)
抽出法蒸気抽出(ヴェイパーインフュージョン)ボタニカルを液体に浸さず、銅製のバスケットに入れて蒸気を通すボンベイサファイア(1830年代にさかのぼるカーターヘッド式蒸溜器)
蒸溜方式ワンショット1回の仕込み分のボタニカルで蒸溜し、加水のほかは何も足さずに瓶詰めするシップスミス
蒸溜方式マルチショット(コンセントレート法)通常より多いボタニカルで濃縮液を造り、あとから中性スピリッツで薄める業界誌が例に挙げるゴードンズ、ビーフィーター、プリマス、ミラーズ

浸漬(マセレーション)という抽出法

浸漬は、ボタニカルをベーススピリッツに直接漬け込み、香味成分を液体に移してから蒸溜する方法です。ビーフィーターを所有するペルノ・リカールは、9種のボタニカルを24時間浸漬(スティーピング)する工程を、このジンの製法の特徴として公式サイトで説明しています。

蒸気抽出(ヴェイパーインフュージョン)という抽出法

蒸気抽出は、ボタニカルを液体に触れさせず、蒸溜器を上ってくる蒸気をボタニカルにくぐらせて香りを移す方法です。ボンベイサファイアは、1830年代にさかのぼる「トム」と「メアリー」という2基のカーターヘッド式蒸溜器を今も使い、最大12種のボタニカルを穴の開いた銅製バスケットに入れてスピリッツの上につるし、蒸溜中に香りを移すと公式サイトで説明しています。同社はこの工程を「ヴェイパーインフュージョン」と呼んでいます。

浸漬と蒸気抽出は択一の関係ではなく、1基の蒸溜器の中で併用する設計もあります。アイラ島のブルックラディ蒸溜所が造るザ・ボタニストは、島で手摘みした22種の野生ボタニカルを使うと、同蒸溜所を傘下に持つレミー コアントローが説明しています。酒類情報サイトのディフォーズガイドによると、蒸溜には容量11,600Lのローモンドスチル「アグリー・ベティ」を使い、ジュニパーなど9種の基本ボタニカルは温めたスピリッツに浮かべて一晩浸し、島で摘んだ葉や花びらなど繊細なボタニカルはライン・アーム(蒸気の通り道)の途中に設けたチェンバーに入れて蒸気を通します。蒸溜は低く一定の圧力で17時間かけて行うといいます。

ワンショットとマルチショットという蒸溜方式の違い

ワンショットは、1回分のボタニカルをベーススピリッツとともに蒸溜器に入れて浸漬・蒸溜し、得られた蒸溜液を中性スピリッツで薄めずに製品にする方式です。シップスミスは、10種のボタニカルを15時間浸漬してから蒸溜し、アルコール分41.6%まで湧き水で割るほかは、浸漬の開始から瓶詰めまでスピリッツを変えたり足したりしないと公式サイトで説明しています。同社はこの方式を、今ではめったに使われない方法としています。

マルチショット(コンセントレート法)は、通常の仕込みより多いボタニカルを蒸溜器に入れて濃縮した蒸溜液を造り、それを中性スピリッツで薄めてから加水・瓶詰めする方式です。業界誌ディスティラーマガジン(2016年)は、ボタニカルの比率は2:1から35:1まで引き上げられるとし、ゴードンズ、ビーフィーター、プリマス、ミラーズなど主要ブランドの多くがこの方式を使うと説明しています。同誌によれば、蒸溜器を効率よく使えるうえ、中性スピリッツは加水・瓶詰めを行う工場で加えるのが一般的なため、蒸溜所から瓶詰め拠点への輸送コストを抑えられるといいます。

ワンショットとマルチショットの違いは、ボタニカルの量と、蒸溜液を中性スピリッツで薄めるかどうかにあります。浸漬か蒸気抽出かという抽出法とは別の区分です。

法令上の分類との関係

米国の連邦規則集27 CFR 5.144は、もろみからの蒸溜、蒸溜酒の再蒸溜、中性スピリッツとの混合のいずれかの方法で、ジュニパーベリー(任意でほかの香味原料や、それらを浸出・浸漬して得た抽出物)とともに造った酒を「ジン」とし、ジンと中性スピリッツを混ぜたものもジンに含めています。瓶詰め時のアルコール分は40%以上です。そのうえで、もろみからの蒸溜または再蒸溜のみで造られたジンに限り、「ディスティルド」「ドライ」「ロンドン」「オールド・トム」のいずれか、またはその組み合わせを表示できるとしています。

EUの蒸溜酒規則2019/787は、ジンを3つのカテゴリーに分け、いずれも最低アルコール分を37.5%としています。カテゴリー20「ジン」は、農業由来のエチルアルコールにジュニパーベリーで香味を付けた酒で、香味付けには香料物質や香料調製品を使い、ジュニパーの味が主体になるよう求めています。カテゴリー21「ディスティルド・ジン」は、当初のアルコール分96%以上の農業由来エチルアルコールをジュニパーベリーとほかの天然ボタニカルとともに蒸溜したもの、またはその蒸溜液に同じ組成・純度・アルコール分の農業由来エチルアルコールを合わせたものです。エッセンスや香料を加えただけのジンは、ディスティルド・ジンとはみなされません。カテゴリー22「ロンドン・ジン」はさらに厳しく、香味は使用した天然の植物原料すべてとともに蒸溜することだけで付け、得られる蒸溜液のアルコール分は70%以上とします。ほかに含めてよいのは規則の基準を満たす農業由来エチルアルコール、1Lあたり0.1g以内の甘味料、水に限られ、着色は認められていません。

このようにEUの規則は、ボタニカルとの蒸溜で得た液に基準を満たすエチルアルコールを加えることを、ディスティルド・ジンとロンドン・ジンのどちらでも認めています。濃縮液を中性スピリッツで薄めるマルチショットも、この範囲で行う限りこれらの区分と両立します。

買うときに見るところ

ラベルの「Distilled(ディスティルド)」表記は、米国の区分では、もろみからの蒸溜または再蒸溜のみで造られたジンであることを示します。EUでも、エッセンスや香料を加えただけのジンはディスティルド・ジンを名乗れません。

「ワンショット」や「マルチショット」の明記は蒸溜所しだいです。シップスミスのようにワンショットを特徴として掲げる例はありますが、ラベルに記載がないことだけでは、どちらの方式で造られたかは判断できません。

ボタニカルの構成はボタニカル一覧、ジンの度数や定義の要件はジンとは、ロンドン・ジンの要件はロンドン・ドライ・ジンとは、ジュニパーベリーそのものはジュニパーベリーとはにまとめています。

出典

  • EU蒸溜酒規則2019/787 Annex I https://www.legislation.gov.uk/eur/2019/787/annex/I/adopted
  • 27 CFR 5.144(米国TTB規則) https://www.govinfo.gov/content/pkg/CFR-2024-title27-vol1/pdf/CFR-2024-title27-vol1-part5-subpartI.pdf
  • Bombay Sapphire公式「Our Story」 https://www.bombaysapphire.com/our-story/
  • Sipsmith公式「Inside One-Shot Distillation」 https://sipsmith.com/inside-one-shot-distillation/
  • Pernod Ricard公式「Beefeater」 https://www.pernod-ricard.com/en/brands/beefeater
  • Rémy Cointreau公式「The Botanist」 https://www.remy-cointreau.com/en/brands/the-botanist/
  • Distiller Magazine「One-Shot vs. Concentrate」(2016年) https://distilling.com/distillermagazine/one-shot-vs-concentrate-or-concentrating-on-gin-with-a-single-shot/
  • Difford's Guide「The Botanist Gin」 https://www.diffordsguide.com/beer-wine-spirits/1482/the-botanist-gin

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よくある質問

ワンショットとマルチショットの違いは何ですか?
ワンショットは1回の仕込み分のボタニカルで蒸溜し、加水のほかは何も加えずに瓶詰めする方式です。マルチショットは通常より多いボタニカルで濃縮液を造り、あとから中性スピリッツで薄めます。業界誌ディスティラーマガジンによれば、ボタニカルの比率は2:1から35:1まで幅があります。
浸漬と蒸気抽出はどちらが主流ですか?
この記事で参照した規則や公式資料には、どちらが主流かを示す統計はありません。ビーフィーターのようにボタニカルを24時間浸漬する例、ボンベイサファイアのように銅製バスケットに入れたボタニカルに蒸気を通す例、ザ・ボタニストのように1基の蒸溜器の中で両方を併用する例があり、蒸溜所ごとに設計が異なります。
ラベルの「Distilled」表示は何を意味しますか?
米国の連邦規則集27 CFR 5.144では、もろみからの蒸溜または再蒸溜のみで造られたジンに限り「Distilled」などの表示ができるとしています。EUの蒸溜酒規則2019/787も、エッセンスや香料を加えただけのジンはディスティルド・ジンとみなさないと定めています。

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