クラフトジンとは

「クラフトジン」とは何を指す言葉なのかを調べても、はっきりした答えは出てきません。理由は単純です。「クラフト」には、ジンそのもののような規格が定められていないからです。

このページでは、まず「クラフト」に規格がないことを正面から確認します。そのうえで、GINWORLDが収録する81カ国・638軒のジン蒸溜所データを使い、近年の新規参入の規模を数字で見ていきます。

規格が定められていないこと

スコッチウイスキーやバーボンには、生産国の法令に基づく生産規格があります。原料、蒸溜時のアルコール度数の上限、熟成に使う容器といった条件を満たさないものは、その名称を使えません。スコッチウイスキーには、さらに最低熟成期間の定めがあります。

ジンそのものにも規格はあります。EUの蒸溜酒に関する規則では「ジン」「蒸溜ジン」「ロンドン・ジン」がそれぞれ別のカテゴリとして定義され、ジュニパーベリーを主たる香味とすることなどが条件として定められています。ロンドン・ドライ・ジンが産地ではなく製法を指す呼称なのは、このためです。

一方で、これらの規格に「クラフト」というカテゴリはありません。ジンを名乗るための条件は定められていても、クラフトを名乗るための条件は定められていない、ということです。「クラフトジン」は、規格上の区分ではなく、市場で使われている呼び名です。

データで見る新規参入

言葉に規格がない以上、実態は数字で見るしかありません。GINWORLDに収録する638軒のジン蒸溜所のうち、創業年が判明しているのは605軒です。この605軒を創業年で分けると、次のようになります。

  • 2010年以降の創業:462軒(605軒の76%)
  • 2015年以降の創業:285軒(同47%)
  • 1990年代の創業:13軒
  • 1900年までに創業:43軒

1900年までに創業した蒸溜所が43軒である一方、2010年以降に創業したものは462軒あります。収録データから読み取れるのは、この期間に蒸溜所の数が大きく増えたという事実です。

増加は特定の国に限った現象ではありません。2010年以降に創業した462軒は69カ国に分布しています。主な国では、イギリス120軒のうち100軒、アメリカ78軒のうち56軒、オーストラリア40軒のうち35軒、日本36軒のうち31軒が2010年以降の創業です。

年代別の創業蒸溜所数

創業年が判明している605軒を、10年単位で並べたものです。該当が0軒の年代は行を設けていません。

創業年代蒸溜所数
1570年代1
1580年代1
1640年代2
1650年代1
1690年代1
1760年代2
1780年代1
1790年代2
1820年代1
1830年代6
1840年代3
1850年代2
1860年代4
1870年代3
1880年代9
1890年代3
1900年代5
1910年代4
1920年代5
1940年代8
1950年代1
1960年代1
1970年代3
1980年代5
1990年代13
2000年代56
2010年代406
2020年代56

最も古いのは、ジンの祖先にあたるジュネヴァを造るオランダのボルス(1575年)です。1900年以降で該当が0軒だったのは1930年代のみで、1950年代から1980年代までは各10年で1〜5軒にとどまります。そこから2000年代に56軒、2010年代に406軒へと増えています。

「クラフト」から読み取れないこと

規格がない以上、この言葉だけから規模や製法を読み取ることはできません。一方で、ジンの規格そのものには香味の付け方による区分があり、EUの規則は、ボタニカルの香味を蒸溜の段階で抽出する「蒸溜ジン」を、ジンのカテゴリとは別に定義しています。製品がどちらに当たるかは、規格上の区分として確認できる事柄です。

判断の材料になるのは、その蒸溜所が実際にいつ創業し、どこにあり、誰が所有し、何を使っているかという個別の事実です。本サイトの蒸溜所ページでは、創業年・所在国・オーナー企業・スタイル・主要ボタニカルを蒸溜所ごとに掲載しています。

コンテンポラリー・スタイルとの関係

本サイトが収録する1439製品をスタイル分類で見ると、最も多いのはコンテンポラリー・ジンの812製品で、ロンドン・ドライ・ジンの247製品を上回ります。

ただし、新しいスタイルが2010年代の新規蒸溜所だけのものというわけではありません。モンキー47(ドイツ・2008年創業)やシップスミス(イギリス・2009年創業)のように、2010年より前に創業した蒸溜所も2000年代の56軒に含まれています。

土地の素材を使う実例

蒸溜所が何を香味の材料に使っているかは、データの主要ボタニカル欄から確認できます。

  • 京都(季の美)(2016年創業):ジュニパー・玉露・笹・檜・山椒・柚子
  • 桜尾(2018年創業):ジュニパーベリー・コリアンダー・柚子・レモン・夏みかん・橙・ヒノキ樹皮・緑茶・赤紫蘇・生姜
  • フォーピラーズ(オーストラリア・2013年創業):ジュニパー・シトラス・アニスマートル・ターマリック・オーストラリア産ペッパーベリー
  • ケープバイロン(オーストラリア・2016年創業):レモンマートル・ネイティブジンジャー・アニスシードマートル・バンクシア・マカデミア・フィンガーライム

日本の蒸溜所は36軒を収録しており、それらに紐づく製品は85点です。このうちジャパニーズ・ジンに分類されるものが52点あります。産地別の一覧は産地図鑑から、スタイル別の一覧はスタイル図鑑からたどれます。

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よくある質問

クラフトジンと普通のジンの違いは何ですか?
製法や品質の違いを定めた基準はありません。ジンには「ジン」「蒸溜ジン」「ロンドン・ジン」といったカテゴリの定義がありますが、「クラフト」という語自体を規制する法令は存在しないため、両者を線引きする公式な基準もありません。小規模生産、蒸溜所での一貫生産、土地のボタニカルの使用といった意味合いで慣用的に使われています。
クラフトジンのブームはいつから始まったのですか?
GINWORLDが収録するジン蒸溜所のうち、創業年が判明している605軒を見ると、2010年以降の創業が462軒、2015年以降が285軒です。1990年代の創業は13軒、2000年代は56軒でした。年代別の件数としては、2010年代の406軒が突出しています。
クラフトジンは小さな蒸溜所だけが造っているのですか?
いいえ。「クラフト」を名乗るための規模や所有形態の基準は法令上存在しないため、大手企業の傘下で造られる製品に用いられることもあります。蒸溜所の規模や所有関係を知りたい場合は、各蒸溜所ページのオーナー企業の記載を確認してください。
クラフトジンはどの国で多く造られていますか?
収録する638軒の内訳では、イギリス120軒、アメリカ78軒、オーストラリア40軒、日本36軒の順です。2010年以降に創業した462軒は69カ国に分布しており、新規参入は特定の国に限られた動きではありません。

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